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点字付き布絵本

点字付き布絵本に興味のある方、作ってみたいという方の参考になれば




■き っ か け


点字付き布絵本を作ろうと思ったのは、共同製作のお話しを
いただいたのが最初でした。
未経験の分野にまず私たちは≪障害者≫と≪点字≫について
認識を得ることから始めました。
 

■検 討

様々な情報先からご意見や作品を取材し、ハンディキャップが
どういう事なのかを知るにつれ、私たちの範疇を超える困難さに
不可能かと諦めかけました。
ところが盲学校の先生より普通の布絵本も使っている事を教えて
いただいたことで、私たちの活動の中でも可能性があると
強く心惹かれました。
メンバーがそれぞれ集めた資料を持ち寄り検討した結果、『点字
付き布絵本』の製作に挑戦することとなりました。

■バ リ ア フ リ ー

私たちは障害者用として作るのではなく、一般の布絵本を
  
障害者の方にも楽しんでいただけるよう何とか工夫できないか? 
  
共に喜んでもらえないか? 
を基本構想にして、健常者用の布絵本を作る時よりも
≪変化を持たせた素材選び≫≪より立体的に≫≪安全性など特に
配慮をすること≫≪しかけ作りも簡単で展開の面白みのあるもの≫
をと心がけました。

■点 字 シ ー ト

点字をどのような形で布絵本に取り込むかは難題でした。
紙面に点字を打ったものの他に、近年透明な点字シート(タックシートと
いいます)をよく見かけます。このシートは裏面に接着剤がついていて
色々なものに貼ることが出来ます。

布とシートは異質な素材―――「ふわふわ」では耐久性・美観・修理などを
考慮し、点字シートを直接台布に貼り付けず、点字部分のみの透明な
別ページを加える手法を採りました。

板状の透明シートに点字シートが貼られている本をヒントに、布絵本の
柔らかさ・暖かさを損なわない素材をいろいろ探し、その中でテーブル
クロス用の透明な塩化ビニール(厚さは4〜5段階あります)が適していると
判断。
サンプルの中より実際に目の見えない方に感触を確かめていただき
厚さを決定しました。

利点としては点訳の別ページを取り除けば、まったく普通の布絵本と
変わりありません。また点字のページがあっても文字(墨字といいます)の
部分は透けて読めますので違和感がありません。

点字シートを別ページ(30×30)のどの位置に貼り付けるか、完成した
布絵本をやはり目の見えない方に触ってもらって各ページ毎に位置を
確認しながら点字シートを貼り付けていきました。
この時シートの四角を丸くします(
重要―指の怪我を防ぎます)

 ■点字の注意点

 (1)点字の種類
  専門家の方から
    
全盲者より弱視者が多いこと
    
先天性失明者より中途失明者が多いこと
    
点字にも普通サイズと大きなサイズのL点字がある事、そして中途
      失明者にはL点字の方が読みやすいこと
  を教えていただきました。

 (2)墨字の大きさ
  弱視者用の図書については拡大図書の出版社に問い合わせたところ
    
文字の大きさを22ポイント(約8mm四方)
    
文字の形(フォント)をゴシック体
  で標準製作しているとのことでした。

 (3)墨字の判別
  地色と文字色はコントラストの強いものが良いという専門家のお話から
    
一般的な組み合わせは≪白地に黒文字≫
  今回「ふわふわ」では台布の黄色の色合いを実際に見てもらい≪黄色地に
  黒文字≫を採用しました。




■布絵本製作

(1)素材選び
 布絵本の素材(アップリケ)はほとんどフェルトですが、髪の毛・洋服・
 小物・動物の毛並みなど本物により近いものを使用
 合皮・ビニールクロス・不織布・レースなど様々な素材の感触(ツルツル・
 ザラザラ、ふわふわ・ごわごわ)の違いで面白さをだします。
 
(2)立体感
 指先で触って凹凸・重なり具合いからそこにあるものを認識をしますので、
 人型は厚みのない人形を作るような感じです。
 従来ですとフェルトをものの輪郭で切り台布に縫いつけますが、半立体に
 仕上げたものを台布に縫いつけます。
 このときべったり縫いつけるのではなく、台布から浮かす部分・動く部分を
 取り入れて変化を持たせます。

(3)仕掛け
 3次元の世界を2次元に表現すること、見たことも触ったこともないものを
 認識することの難しさは想像以上でした。
 仕掛けは試作品を作り、みんなで何度も検討し健常者には見てわかることでも
 両手の間で探せて簡単に手触りで判るものを考案しました。
 
(4)安全性

 なんと言っても安全性が一番。 普通の布絵本製作以上に神経を使いました。
 通常台布にハト目をつけてリングでページをまとめ本仕立てにしますが、今回は
 ページにループ(布の輪)を付けひもでまとめました。
 もちろんマジックテープのカット面も角の無いようにします。

 
■点字付き布絵本

「ふわふわ」では現在下記の4作品があります。
★印は既存の布絵本に点字ページを付け加えたものです。
◎印は作品を公開しております。作品名をクリックしてください。

  「まるちゃん」 
                      「ちいさなまじょの ぼうけん」
  「こわいこわい こわ〜いのなぁ〜んだ?」
      「おおきく おおきく おおきくなあれ」




私たちは目にハンディキャップのある方に接する学校関係者・出版社・点訳ボランティア・図書館員など
多くの専門家からのアドバイスをいただいて≪点字付き布絵本≫を完成することができました。

完成した布絵本は盲学校の生徒さんに実際に遊んでもらって
感想をいただき、不具合のあった箇所は改良を加えて改訂版を製作、寄贈しました。
感想文(点字+墨字)に綴られている子供達の喜んでいる様子は 
8ヶ月かけて作品を練り上げた苦労も忘れさせます。
そして何より私たちのやる気を引き出してくれるものです。

ご協力いただいた皆様方に改めてお礼申し上げます。
とともに

また機会があれば挑戦したいと思います。

                                   平成11年9月

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